許可要件

以下、5つの要件を『全て』満たすことで産業廃棄物収集運搬業許可の取得が可能です。

講習の修了

産業廃棄物収集運搬をするにあたり、講習をうける事で収集運搬への知識と能力をつけてもらうという観点から、定められた要件です。講習は公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が主催する「産業廃棄物収集運搬過程」の講習会でなければなりません。また、許可要件ではその講習を受ける人も限定されており、以下の要件を満たす必要があります。

受講者
・法人の場合・・・取締役
・個人の場合・・・個人事業主本人必要な講習
・新規許可が必要な場合・・・新規許可講習(有効期間5年)
・更新許可が必要な場合・・・更新許可講習(有効期間2年)

講習会は全国各地で頻繁に開催されておりますが、近隣の都道府県において希望する講習会が年に数回しかないこともあります。特に許可更新が近くなってから慌てて探すと、東京や大阪しかない場合もありますので、余裕を持った講習の受講をおすすめしています。

また、有効期間内の新規許可講習修了証を持っていれば、許可更新であってもその修了証が使えます。しかし、更新許可講習修了証では新規許可の修了証としては認められませんのでご注意下さい。

駐車場

収集運搬に使う車両を置く駐車場ですが許可上は「事業所」となります。駐車場は通常会社の敷地内か、会社の近くにあり、倉庫や他の重機が置いてある事も多いです。
法人(個人)で所有しているか賃貸借契約で借りているかは問題ありませんが、必ず確認しないといけない点があります。

・登記上、地目が「農地」以外となっているか
・駐車場が道路に面しているか

となります。

地目とは登記上における土地の目的であり、農地とは地目が「畑」や「田」といったものとなります。
農地に関しては農地法という法律で厳重に守られており、農地を農作以外に使うことが固く禁じられております。というのも、日本は土地が狭いため農地を確保し食糧供給の安定を図るという目的で、農地を勝手に他の目的に使えないようになっているのです。

したがって、農地を所有している人が自分の農地を駐車場にしたいと思っても、勝手に農地以外に使用することは出来ません。そのためには農地転用という手続きを行う必要があり、実はこれも行政書士の仕事となります。

また、使用する駐車場が道路に面しているかどうか駐車場の公図で判断するのですが、時々他人の敷地を通過している場合がみられます。昔から使っている土地などに多いのですが、申請時に追加で裏付書類を出す必要があるので注意が必要です。

「車両・運搬容器」

収集運搬に使う車両ですが、ダンプ・キャブオーバが多く使われます。大きさに関係はなく、軽自動車でも登録可能です。また、運搬する産業廃棄物の種類によっては、流出や飛散しないために運搬容器が必要な場合もあります。こうした車両・運搬容器にも確認することがあります。

・運搬する種類が制限される「土砂禁止ダンプ」
・様々な種類がある「ドラム缶」

よく車検証をみると、土砂禁止のダンプがみられます。荷台の高さがあるダンプにおおいのですが、それに土砂をいっぱい積んでしまうと荷重が大きすぎて危険なため土砂禁止となっています。

そういったダンプでは、産業廃棄物の種類である「がれき」など運搬できないため、いざ許可を取得しようと思っても収集運搬できる種類が制限されてしまいますので、土砂禁止ダンプかどうかの確認をお願い致します。

またドラム缶ですが、産業廃棄物のほとんどの種類に対応できる汎用性が高い運搬容器となります。ただ、ドラム缶にも様々な種類があり、「蓋がある事」「蓋を開け閉めできること」が条件となりますのでご注意下さい。

あと許可取得後、かならず産業廃棄物収集運搬車であることを車両に掲示する義務がありますのでそこも注意する必要があります。

決算書内容

産業廃棄物収集運搬業の許可制度は、不法投棄をなくし環境を保護するために定められたものとなります。したがって、経営状況悪化により、産業廃棄物処理の依頼を受けた業者が費用を浮かすため不法処理をしたり、未処理の産業廃棄物を適切に処理せずに廃業などをすることを防ぐため、決算書内容が審査されます。判断基準は自治体によって異なりますが、長野県では以下のことを審査します。

①時期への繰越損失がある
⇒繰越利益剰余金がマイナス
②3年間の平均経常損失が赤字、かつ、直前期の経常損失が赤字
⇒経常利益がマイナス
③債務超過
⇒純資産がマイナス①~③のいずれかに該当する場合・・・「長期的財務計画書」の提出
①~③のすべてに該当する場合・・・「長期的財務計画書」+「診断書」の提出

となります。

「長期的財務計画書」は当事務所で作成できますが、「診断書」は公認会計士又は中小企業診断士が作成するものに限られます。新規許可だけでなく、更新許可申請の際にも同じように審査されますので、新規申請時だけでなく更新が近くなってきた時も対策が必要です。

欠格要件

申請法人の役員(取締役、執行役、相談役、顧問、法人に対して業務を執行する社員、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主又は100分の5以上の出資をしている者を含む)、政令第6条の10に規定する使用人(政令使用人)の中に、欠格事由に該当する者が一人でもいる場合、産業廃棄物収集運搬業許可を取得できません。以下、欠格要件となります。

・成年被後見人または被保佐人または破産者で免責を受けていない人
・禁錮以上の刑を受け「執行が終わった日」「受けることがなくなった日」から5年を経過していない人
・廃棄物処理法などの法令に違反して罰金以上の処罰を受け「執行が終わった日」「受けることがなくなった日」から5年を経過していない人
・「産業廃棄物関係の許可を取消された法人」の取締役であり、許可取消の日から5年を経過していない人
・暴力団員または暴力団員でなくなった日から、5年を経過していない人
・その業務に関して不正又は不誠実な行為をする恐れがあると認められる相当な理由がある人

自分には関係ないと思っている方、ご注意下さい。年に1回程度ではありますが、欠格要件に該当してしまう案件が発生しています!

例1 酔っ払って他人と喧嘩し、けがをさせて、罰金を支払った
⇒傷害罪により、欠格要件に該当
例2 酒気帯び運転をし、重大な事故をおこしてしまい、懲役刑が確定
⇒執行猶予がついても、欠格要件に該当

といったことが実際に発生しています。しかも法人の場合、実務に関係していない「名目上の役員」「総株式数の5%以上を保有する株主」が欠格要件に該当すると、許可の取消となります

いつでも欠格要件に該当するおそれがある事を念頭に置いていただければと思います。

許可概要

産業廃棄物とは

廃棄物とは、有償で売却したりできず不要になったものです。廃棄物は大きく分けて「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分類されます。

「産業廃棄物」

事業活動から排出された廃棄物。処理責任は最初に排出した事業者にあります。

「一般廃棄物」

一般的な生活活動から排出された廃棄物。事業活動に伴って排出された廃棄物以外を指し、処理責任は各自治体にあります。さらに一般廃棄物の場合、以下の廃棄物に分類されます。
・事業系一般廃棄物
⇒事業活動に伴って排出された廃棄物のうち、産業廃棄物に該当しない廃棄物
・家庭系一般廃棄物
⇒産業廃棄物、事業系一般廃棄物すべてに該当しない廃棄物
また、それぞれの廃棄物に取扱に注意しないといけない「特別管理廃棄物」が存在します。図示すると以下のようになります。

産業廃棄物の種類

「産業廃棄物(普通産廃)」

産業廃棄物は全部で21種類あり、種類ごとに収集運搬業の許可が必要であると定めています。

その内、特定の事業者が排出した場合のみ、産業廃棄物としてみなされる廃棄物が7種類定められています。(下記の一覧に※が付いた種類です

具体例として、造園業者が造園工事の一つとして庭木の剪定をした場合、建設業から排出した木くずに該当するため産業廃棄物となります。
一方、建設会社でない単なる造園サービス業として剪定を行った場合は、工事ではないので産業廃棄物ではなく一般廃棄物となります。

以下、具体例となります。これらに該当する廃棄物が全て産業廃棄物であり、該当しないと一般廃棄物となります。
1. 燃え殻
2. 汚泥
3. 廃油
4. 廃酸
5. 廃アルカリ
6. 廃プラスチック類
7. 紙くず
8. 木くず
9. 繊維くず
10. 動植物性残さ
11. 動物系固形不要物
12. ゴムくず
13. 金属くず
14. ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものを除く。)及び陶磁器くず
15. 鉱さい
16. がれき類
17. 動物の糞尿※
18. 動物の死体※
19. ばいじん
20. 産業廃棄物を処分するために処理したもの

「特別管理産業廃棄物(特管物)」

また上記の産業廃棄物に加え、爆発の危険性があったり、毒物、感染性のある産業廃棄物を『特別管理産業廃棄物』として定め、より厳格な扱いが求められています。

産業廃棄物収集運搬業の許可を受けようとする場合、こうした「産業廃棄物」「特別管理産業廃棄物」の中から実情を踏まえて必要な種類を選ぶ必要があります。

また、許可を受けた後に別の業種の許可が必要となったときは追加の申請をすることができます。ただ、追加申請の度に手数料がかかってくるため、新規で取得する際に今後必要と思われる種類を全て申請することをおすすめしています。

産業廃棄物収集運搬業とは

排出事業者から排出された廃棄物ですが、通常以下の流れで処分されます。

排出」排出事業者が自ら運ぶ場合、許可無しで直接中間処理場や最終処分場に運搬可能です。

収集運搬」アスベストなどは中間処理場ではなく、直接最終処分場へと運搬します。

中間処理」大きな廃棄物は小さく、有害な場合は無害化します。

収集運搬

最終処分場」最終的には埋立となります。

この廃棄物を収集運搬するにあたり、業として確立し、許可制度を持たせたものが産業廃棄物収集運搬業許可となり、下記の2種類となります。
・産業廃棄物収集運搬業
・特別管理産業廃棄物収集運搬業

また、排出場所から処理場まで廃棄物を直接運搬せず、一旦運搬業者の事業所内に保管することを「積替保管」といいます。この積替保管の許可が無い場合、事業所に廃棄物を持込むことが出来ません。

建設現場から出た廃棄物を直接処理場へ運搬せず、事業所にいったん帰ることは法令違反となりますのでくれぐれもご注意下さい。

産業廃棄物収集運搬業許可の提出先

産業廃棄物収集運搬業許可ですが、原則都道府県知事となります。

提出先の都道府県ですが、運搬業者の本店を管轄する都道府県ではなく、「廃棄物を収集する都道府県」「廃棄物を持込む都道府県」に提出しなければなりません。

・長野県内で排出された廃棄物を長野県内の処理場に運搬する場合
⇒「長野県知事許可」が必要
・長野県内で排出された廃棄物を静岡県内の処理場に運搬する場合
⇒「長野県知事許可」並びに「静岡県知事許可」が必要
となります。
一方、県をまたいで通過する場合のみの場合、その県の許可は不要です。仮に本店が愛知県ににあっても、長野県から静岡県へ運搬する場合は愛知県の許可は不要となります!

許可申請の手続き

産業廃棄物収集運搬許可申請の種類には、以下のパターンがあります。

「新規申請」

現在有効な許可をどの許可行政庁からも受けていない者が、許可を申請する場合

「変更許可」

許可を受けた後、運搬する種類を増やす場合など

「許可更新」

既に受けている建設業の許可を、そのままの要件で続けて申請する場合

※それぞれに、特別管理産業廃棄物の申請も加わり、計6パターン存在

許可取得後の諸手続

建設業許可取得後も、以下の手続きが必要です。

「許可の更新」

許可の有効期間は5年間(優良の場合7年)です。
引き続き許可を受けて営業しようとする場合は、許可の更新を受ける必要があります。
この場合、許可の有効期間が満了する日の2か月前から、更新申請を提出可能です。

※ 許可の更新手続きを行わないまま許可の有効期間が経過したときは、効力を失います。この場合、改めて許可を受けるためには、新規に許可申請する必要があります。

「許可を受けたあとの届出」

許可を受けたあと、以下の場合には必要な書類を添付した変更届出書等を提出しなければなりません。

・氏名又は名称の変更
・主たる事務所(本店など)の住所の変更
・役員等の変更
・駐車場の変更
・収集運搬車両の変更
・事業の廃止

※運搬する廃棄物の種類を変更する場合、事業計画の変更が伴うため「変更許可申請」となりますのでご注意下さい。

許可申請の審査の標準処理期間

産業廃棄物収集運搬業許可(積替保管を除く)の標準処理期間は申請から40日間

マニフェストとは

産業廃棄物収集運搬業の許可に関係するものとして、マニフェストがあります。

マニフェスト導入以前は、処理の契約は交わすものの、実際にどこでどのように処理されたかの確認がほぼ不可能でした。そうした状況の中、不法投棄が増加したため廃棄物の排出者の責任を明確にし、処理の契約後も適切に処理されているかチェックするためにうまれたのがマニフェストとなります。

マニフェストには、廃棄物について以下の事項を記載します
・誰が(委託者・収集運搬業者・中間処理業者など)
・何を(産業廃棄物の種類)
・どのように(産業廃棄物の処分方法)
・いつ(マニフェストの発行日・運搬終了日・処分終了日など)処理したのか

これらの情報を記載することで、全ての当事者が廃棄物について把握可能となります。

その他

上記以外にも、下記について手続き上の注意点があります。

「先行許可証」

既に長野県での産業廃棄物収集運搬業許可をもっている収集運搬業者が、他の都道府県に産業廃棄物収集運搬業の新規許可申請を提出する場合、既に長野県で許可を取得していることから提出書類が大幅に省略可能となります。

この制度を「先行許可証」といいますが、知らない方もおりますのでぜひ参考にしていただければと思います。

「優良産廃処理業者認定制度」

通常の許可基準よりも厳しい基準に適合した優良な産廃処理業者を、都道府県・政令市が審査して認定する制度です。取得することで、許可期間が5年から7年へと延長されます。

有価物とはどのようなものを指しますか?

実際に売却できる資源の事を指します。許可上問題になってくるのが、有価物か廃棄物かで収集運搬業の許可が必要かどうか変わってくる点です。しかも、大変グレーな部分です。何かあってもいいように、当事務所では収集運搬できる品目を多めに取得することをおすすめしています。