医療法人化への「メリット・デメリット」及び注意点

 

医療法人化によるメリット

医療法人化により、以下4点のメリットがあげられます。

・事業承継の簡素化
・節税対策
・従業員への福利厚生
・対外的な信用度の上昇

「事業承継の簡素化」

個人事業主として事業を行っている場合、あくまで事業主は医師一人であるため、事業自体は一代限りとなります。

そのため、医師が引退・死亡などにより診療所ができなくなった場合、後継者に事業譲渡したくともそのまま引き継ぐことは出来ず、すべて新規申請となります。

さらに突然医師が亡くなってしまった場合、死亡から10日以内に廃業申請を提出し、同時に後継者の新規申請を提出しなければなりません。葬儀や診療所関係書類以外も多くある中、スムーズな診療所移行には大変な労力がかかってしまいます。

その点、法人化さえしてしまえば新たに理事長を交代する事により、事業自体はそのまま継続できるため、大変スムーズな移行が可能となります。

「節税対策」

個人事業主の場合、税金は「所得税」です。所得税は累進課税(所得が多ければ多いほど税率も上がる)制度をとっています。一方法人の場合、税金は「法人税」となり、累進課税制度ではなく、一定税率となります。

医療法人にもこの法人税が適用されます。また、所得ではなく給与となることから、給与所得控除などの恩恵を受けることが出来ます。さらには役員退職金の支給も可能となります。

どの程度節税となるかは、顧問税理士にシュミレーションをしてもらうといいかと思いますので、相談されることをおすすめします。

「従業員への福利厚生」

個人事業主の時には従業員5人未満の場合は厚生年金に加入する義務はありませんが、法人化することで、厚生年金への加入が義務となります。
いままで国民年金であった従業員も厚生年金になり福利厚生が高まることで、従業員の定着にもつながります。

「対外的な信用度の上昇」

すでに医者という時点で信用度はありますが、法人化することで金融機関からの融資など有利に働くことが考えられます。

医療法人化によるデメリット

一方、医療法人化により、以下4つのデメリットがあります。

・法人解散時、国庫への財産帰属
・経費の増大
・交際費の計上
・事業継続の煩雑さ(定時総会、経営と家計の分離)

「法人解散時、国庫への財産帰属」

医療法人は公共性が高く、営利目的での運営が認められない事から
①剰余金が認められない
②財産等の残余は、国、地方自治体、他の医療法人に帰属
という特徴が存在します。つまり、法人が解散した場合に残余財産が医師本人に戻りません!

したがって、当初から法人が解散する事を想定し、医療法人認可申請時点で「財産拠出方法」や「負債引継方法」の対策をしないと、解散時に医師本人に何も残らないだけでなく、最悪負債のみが残るという事になってしまいます。

こうした問題点の対策には、医療法人制度に詳しい税理士・行政書士の連携が不可欠となります。財産帰属で不安になっている方、医療法人に詳しい当事務所へお気軽にご相談下さい。

「経費の増大」

法人になることで、先ほどの厚生年金への加入が義務化されますが、同時に保険料の負担も増加します。
また、年に1回保健所へ報告したり、純資産を登記したりする義務がありますので、そちらの書類作成費用もかかります。
あとは税理士への報酬も法人化によって増加するなど、法人化によって個人事業であったときより費用が多くなる要素が多いです。

「交際費の計上」

個人事業主の場合交際費は全額費用計上できますが、法人化することで交際費が全額計上できなくなります。

「事業継続の煩雑さ」

法人化することで、定時社員総会を最低年2回開催する必要があります。また、個人事業の時に比べて「経営と家計」の分離がよりシビアとなります。

注意点

以上、医療法人化によるメリット・デメリットとなります。特に、節税・保険料・費用といった金銭面での問題が大きいです。個人事業から医療法人化を検討される際、法人化した場合のシュミレーションをしっかりと行い、現時点での青色申告と比較し、メリットが大きい場合に医療法人化をすすめるのがいいかと思います。

また、医療法人化の際に一番気をつけないといけないのが「書類提出のタイミング」となります。特に保険診療を行っている診療所を法人化する場合、保険の切替のタイミングを逃してしまうと、書類が煩雑になるばかりか、最悪保険診療が出来ない期間が出来る可能性があります。

そのタイミングを逃さないためにも、士業(税理士・司法書士・社会保険労務士)との密な連携が不可欠となります。

医療法人化について検討中の方、医療法人に強い税理士・司法書士と連携をとっておりますので、ぜひご相談いただければと思います。

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