以下、6つの要件を『全て』満たすことで建設業許可の取得が可能です。
経営業務管理責任者
経営業務管理責任者とは、建設業の経営は他業種と全く異なる特徴を有していることから、適正な建設業の経営には「一定期間建設業の経営を経験した者が最低限一人は必要」という考えのもと、定められた要件です。「経管者」とも略され、「一定期間建設業の経営を経験した者」とは以下①~⑤いずれかの条件を満たしている者となります。
②、建設業の役員等ではないが、同じような立場(※2)での経験 5年
③、建設業の役員等ではないが、①又は②の者を補佐した(※3)経験 6年
※1 「役員等」とは
法人・・・謄本上に記載された取締役、執行役、支店長、各種組合の理事など
個人・・・個人事業主、登記された支配人
※2 「同じような立場」とは
役員等ではないが、取締役会による決議等により、役員等と同じ業務を行った者
※3 「補佐した」とは
法人・・・①②に準ずる地位として、実質的に①②と同じ業務をした者
個人・・・専従者など
さらに、令和2年10月の法改正により、以下の条件も追加で認められました。
B①②に次ぐ職務上の地位として、「財務管理又は労務管理又は業務運営」(※4)の経験 5年
C「財務管理又は労務管理又は業務運営」としての経験 5年
AとB両方の要件を満たす者に、Cの要件を満たすものが補佐でつく事
⑤、A建設業の役員等としての経験 2年
B建設業・建設業以外関係なく、役員等としての経験 5年
C「財務管理又は労務管理又は業務運営」としての経験 5年
AとB両方の要件を満たす者に、Cの要件を満たすものが補佐でつく事※4 「財務管理又は労務管理又は業務運営」とは
財務管理・・・工事に必要な資金調達や下請業者への支払いなど
労務管理・・・社内や工事現場での勤労管理や、社会保険手続きなど
業務運営・・・会社の経営方針や運営方針を策定、実施する部署に在籍
この改正での目玉は「建設業での役員経験が2年あれば、残り3年は他業種の役員経験でも認められる」という点です。その場合には財務・労務・業務を行う従業員を補佐でつける必要がありますが、その従業員は役員でなくても良いです。
理解が難しい要件ですが、改正により緩和されたことは事実ですので、わからない方はお気軽にご相談ください。
こうして①~⑤のいずれかの要件を満たした者が、
法人・・・取締役など
個人・・・個人事業主、又は、支配人
かつ、『常勤である事』を証明することで経営業務管理責任者の要件を満たします。
専任技術者
専任技術者とは、建設工事の契約締結やその後の工事施工などに専門的な知識が必要となることから、「建設業を行う本店・各支店に専門知識を持った者が必要」という考えのもと、定められた要件です。「専任」とも略され、一般建設業と特定建設業で要件が異なりますが、下記の条件を満たしている者となります。
①、法令で定められた国家資格などを有する者(例:2級土木施工管理技士)
②、指定された学科・学校を卒業し、3年~5年の実務経験を有する者
③、10年以上の実務経験を有する者※②③の実務経験で証明する場合、大変な手間と時間がかかります。また、過去に在籍していた会社での実務経験を証明する場合、資料取り寄せ等でさらに大変な作業となります。
④、法令で定められた国家資格などを有する者(例:1級土木施工管理技士)
⑤、①~③いずれかの要件を満たし、2年以上の指導監督的な実務経験を有する者※⑤について、「土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園」の7業種は指定建設業として実務経験は認められていないため、国家資格のみとなります。
①~⑤いずれかの要件を満たしたものが、『営業所に常勤であること』が必要です。ここで注意したいのが、専任技術者はあくまで本店や各支店に常駐しなければならないため
・本店と支店の専任技術者の兼任
・現場の主任技術者や監理技術者との兼任
といった事が認められません。
ただ、主任技術者との兼任については一人親方といった例外もありますので気になる方はご相談下さい。
財産的基礎
財産的基礎とは、建設途中に万が一廃業されては発注者のみならず関係業者すべてに迷惑がかかることから「建設業者には財産的にある程度の体力が必要」という考えのもと、定められた要件です。一般建設業と特定建設業で要件が異なりますが、下記の条件を満たすことが必要です。
①、自己資本の額が500万円以上(決算書の純資産額。新規法人の場合は資本金額)
②、500万円以上の残高証明(証明日から1ヵ月のみ有効)
③、新規許可を取得後、5年以上経過していること※③新規許可から5年後は「建設業許可更新申請」となります。したがって、更新時には
500万円の財産的基礎を証明しなくともよいということになります。
④、資本金が2000万円以上、かつ、自己資本の額が4000万円以上
⑤、流動比率(流動資産÷流動負債×100)が75%以上
⑥、欠損(繰越利益剰余金がマイナスの場合)の額が、資本金額の20%未満※一般建設業と異なり、特定建設業は④~⑥すべての条件を満たす必要があります!
新規許可取得後、更新申請前に業種追加申請をする場合、新規許可から5年が経過していないため500万円の財産的基礎を証明しなければなりません。
また、法人設立と同時に許可取得したいと相談に来る方で「資本金で500万円が必ず必要」と勘違いされる方が多いです。残高証明書で500万円以上あれば問題ありませんのでご安心下さい。
その他、財産的基礎要件で不安な方、お気軽にご相談下さい。
営業所
実際に契約を締結したり、事務仕事をする場所が営業所となります。個人の場合、実際に仕事をしている場所であれば、自宅の一室でもかまいませんが、居住スペースとの明確な独立が必要です。さらに法人・個人ともに以下①~④の要件をすべて満たす必要があります。
②、来客用や自分用の机・椅子がある事
③、外観に社名や屋号が明確に表示されている事
④、事務所を自己所有か賃貸している事
また、「建設業には全く無関係な営業所や単に登記上の本店」や「建設業に関係があっても臨時に置かれる工事事務所、作業所等」は建設業法上の営業所に該当しません。
こうした要件の証明には写真が使われます。実際に事務所として使用していても、写真の撮影方法によってスムーズに許可が出る場合とそうでない場合があります。ご不安な方、建設業許可申請の際に事務所の写真撮影は当事務所で行いますのでご安心下さい。
社会保険
令和2年の法改正により、社会保険の内会社として「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」に加入していることが許可要件として明文化されました。原則、法人の場合は必ず加入しなければ建設業許可取得できません。また、個人事業の場合でも、従業員が5人以上いると加入が義務となります。以下、加入義務などの一覧となります
・厚生年金保険・・・法人、従業員5人以上の個人事業主に加入義務。
・雇用保険・・・従業員がいる場合に法人、個人事業主関係なく加入義務。
ただし、法人でも役員のみであったり、個人事業主一人の場合は不要
法人設立と同時に建設業許可を取得したい場合に一番厄介なのがこの要件です。法人設立
後、謄本が出来てから保険関係の書類を申請するため、どうしても法人設立から許可申請まで日数がかかってしまいます。
したがって最短で建設業許可を取得したい場合、関係機関や他士業との連携が重要となります。
その他
上記以外の要件で、法律上定められてはいる要件として
・請負契約に関して誠実性を有すること
・欠格要件に概要しないこと
などがあげられます。めったにありませんが、欠格要件に該当する人が役員にいたため建設業許可が取得できない、といった事もありますのでご注意下さい。以下、詳細となります
不正な行為
⇒請負契約の締結・履行の際、詐欺・脅迫・横領・文書偽造など法律違反をする行為
不誠実な行為
⇒工事内容、工期などについて請負契約に違反する行為
こうした行為をしない、する恐れのない事が必要です。
以下に該当する場合は、許可を受けられません。① 許可申請書又はその添付書類中に、重要な事項について虚偽の記載がある場合、又は重要な事実の記載が欠けている場合② 申請者が法人の場合はその役員等、個人の場合は事業主本人、その他に支配人、営業所の代表者などが、以下のような要件に該当している場合(主な場合のみを記載)
◎成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者
◎不正手段により許可を受け、又は営業停止処分等によりその許可を取り消されて5年経過しない者
◎許可の取消処分を免れるために廃業の届出を行い、その届出の日から5年経過しない者
◎上記の届出があった場合に、許可の取消処分に係る聴聞の通知の前60日以内に当該法人の役員等又は個人の使用人であった者で、当該届出の日から5年経過しない者
◎営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
◎禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わった日から5年を経過しない者
◎法令の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わった日から5年経過しない者
◎暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者③ 暴力団員等がその事業活動を支配する者